けんちょんの競プロ精進記録

競プロの精進記録や小ネタを書いていきます

「〜がすべて終わるまでの試行回数の期待値」を求める一般的なフレームワーク

0. プロローグ

期待値にまつわる有名事実として、以下のことが一般によく知られていて、競プロでも過去何度も出題例がある!!!

  1. 確率  p で成功する試行を成功するまで続けたとき、成功するまでの回数の期待値は  \frac{1}{p} である

  2.  n 個の品物がランダムに出力されるコンプガチャにおいて、コンプできるまでガチャを引く回数の期待値は  n(1 + \frac{1}{2} + \dots + \frac{1}{n}) で与えられる

これらを統一する統合フレームワークを構築する。以下のことが成り立つ!!!!!!!


 n 個のクリアすべきミッションがある。 n 個のミッションの部分集合  S に対して、

  •  r_{S} := 一度のトライにおいて  S に含まれるミッションについてはすべて失敗する確率 (他のミッションについては問わない)

とする。このとき、 n 個のミッションがすべて完了するまでのトライ回数の期待値は

  •  1 + \sum_{S \neq \emptyset} (-1)^{|S|-1} \frac{r_{S}}{1 - r_{S}}

で与えられる。


1. 一般化になっていることの確認

確率  p のチャレンジ回数  \frac{1}{p} について

特に  n = 1 とすると、 S として考えられるのは  S = (1) のみであり、上の公式にしたがって期待値を求めると

 1 + (-1)^{1 - 1} \frac{1 - p}{1 - (1 - p))} = \frac{1}{p}

となって一致する。

コンプガチャについて

 k に対して、 k 個の品物がすべて失敗する確率とは、 k 個の中に「当たり」が含まれない確率なので  \frac{n-k}{n} となる。よって求める期待値は

 1 + \sum_{k = 1}^{n} (-1)^{k-1} C(n, k) × \frac{\frac{n-k}{n}}{1 - \frac{n-k}{n}}
 = 1 + \sum_{k = 1}^{n} (-1)^{k-1} C(n, k) × \frac{n-k}{k}

となる。割と俄かに信じがたいのだけど、 n = 1, 2, 3, 4, 5 で手計算すると確かに合っている^^;;

合っていると思えばこれが  n(1 + \frac{1}{2} + \dots + \frac{1}{n}) に一致することは数学的帰納法によって示せる (略)。

2. 証明

まずこの記事にも書いた通り、「成功するまでの回数の期待値」は、

  •  Q_k := 成功までに  k 回以上かかる確率

として  E = 1 + Q_2 + Q_3 + \dots と表せることを利用する。 k = 2, 3, \dots に対して  Q_k を求める。 Q_k を言い換えると

  •  k-1 回目までには少なくとも 1 つのミッションはクリアしない確率

となる。これは包除原理により、

  • (1 個以上を  k-1 回目までにクリアしない確率)
  • -(2 個以上を  k-1 回目までにクリアしない確率)
  • +(3 個以上を  k-1 回目までにクリアしない確率)
  • -(4 個以上を  k-1 回目までにクリアしない確率)
  • +(5 個以上を  k-1 回目までにクリアしない確率)

という感じになる。すなわち、ミッションの部分集合をなす各  S に対して

  •  r_{S} := 一度のトライで  S に含まれるミッションについてはすべて失敗する確率

とおくと、

  •  Q_k = \sum_{S \neq \emptyset} (-1)^{|S|-1} r_{S}^{k-1}

となる。ゆえに求める期待値は

 E = 1 + Q_2 + Q_3 + \dots
 = 1 + \sum_{k = 2}^{\infty} \sum_{S \neq \emptyset} (-1)^{|S|-1} r_{S}^{k-1}
 = 1 + \sum_{S \neq \emptyset} \sum_{k = 2}^{\infty} (-1)^{|S|-1} r_{S}^{k-1}
 = 1 + \sum_{S \neq \emptyset} (-1)^{|S|-1} \frac{r_{S}}{1 - r_{S}}

となることが示された。

3. 問題例

いくつかの問題に適用してみる。

問題例 1

まずは簡単な問題から。上記の大統一フレームワークを用いるまでもなく、「確率  p で成功するミッションに成功するまでの回数の期待値は  \frac{1}{p} を利用することで素直に解くことができる。

drken1215.hatenablog.com

問題例 2

次に、大統一フレームワークをそのまんま適用すれば解ける問題!!!

drken1215.hatenablog.com

問題例 3

最後に、ちょっとひねった感じの問題!!!!!!!

drken1215.hatenablog.com