FPS による考察はやっぱり強力ですね!
問題概要
長さ かつ総和 である非負整数列 のうち、以下の条件を満たすものの個数を 998244353 で割ったあまりを求めよ。
「以下の操作のうちどちらかを選んで行うことを繰り返して、 の全ての要素を 0 にすることが出来る。」
- 操作 1: を満たす整数 を選び、 を 減らす
- 操作 2: を満たす整数 を選び、 を 1 ずつ減らす
制約
考えたこと:操作列の数え上げに帰着する
操作によって出来上がるものが何通りあるかを数え上げる問題では、大きく分けて
- 操作によって作れるかどうかの判定問題をまず解く
- 各対象物を作るための操作列が一意となるようにして、その操作列を数え上げる
という方針があるように思える。今回は後者の考え方が適用できる。
各 に対して、操作 2 の適用回数は 回未満と思った良いことに注意する。操作 2 を に対して 回適用することは、操作 1 を に対して 1 回ずつ適用することで代用できるからだ。
そして、どの に対しても操作 2 の適用回数が 回未満であるように限定した場合に得られる数列に対しては、必要な操作が一意に決まることが言える。具体的には、「左端の 0 より大きいところから Greedy に消していく」という方針によって、操作列が一意に決まる。
さらに整理すると、次のことが言える。
- 操作列において、操作の順序は入れ替えても同一視する
- 各 に対して、操作 2 は 回未満とする
- 各 に対して、操作 1 は任意回数実行する
として得られる数列を考えると、異なる操作列からは異なる数列が生まれることとなる。
よって、操作列を数え上げればよいことになった。
操作列の数え上げ
大前提として が の倍数でない場合は 0 通りとなる。よって、 は の倍数とする。このとき、操作は 回行うことになる。
整理すると、私たちは
を満たすような整数 の組の個数を求めたいことになる。ここから先はさまざまな解法が考えられる。
解法 1:FPS で考えて、Bostan-Mori 法を適用する
一般に「総和が 」などといった制約を見ると FPS が適用できそうに思える。実際、今回も
- 変数 に対応する FPS:
- 変数 に対応する FPS:
これらの積をとって、 次の項を求めればよい。
であるから、最終的に次の値が求められればよいことがわかった。
これは、Bostan-Mori 法 (この記事に詳しく書いた) を適用することで、 の計算量で求められる。
提出コード (Bostan-Mori 法)
分子の と分母の については、二項定理を用いて展開した式を直接入力した。
解法 2:負の二項定理を使う
Bostan-Mori 法をそのまま適用するのは、少し計算時間に不安がある。そこで、もう少し考察を進めることにする。
という式の分母分子を二項定理で展開すると、次のようになる。なお、分母については と考えて、機械的に二項定理を適用する。
ここで、 はいわゆる負の二項係数というものだ。一般に
が成立するので、求める式は
となる。
が大きいながらも、 の が小さいので愚直計算で二項係数を計算できる。計算量は となる。
提出コード (負の二項定理)
解法 3:包除原理
最後に、FPS を使わずに包除原理で解いてみる。ただし、得られるアルゴリズムは、解法 2 (FPS を経由して負の二項定理を適用して得られたもの) に完全に一致する。逆に言えば、FPS を使わずに包除原理で得た解法は、FPS を用いて機械的に導出できるとも言える!
私たちは、
を満たすような整数 の組の個数を求めたい。
ここで、 という制約がなければ、ただの重複組合せだ。そこで包除原理の適用を考える。
という制約を (= ) 個以上破る場合の数を求める。
まず、制約を破る箇所の選び方は 通りある。
次に、制約 を破るということは、新たな制約条件 が追加されるものとみなせる。これは、変数変換して とおくと、 という制約条件になる。
このような変数変換を 個の変数に対して行うので、結局、
を満たす整数 の組の個数を求める問題に等しくなる。ここで、 といった変数名は に統一している。
これは重複組合せの知見を用いて 通りとなる。
まとめると、次の解法となる。
に対して
- が偶数ならば、 を足す
- が奇数ならば、 を引く
これは、負の二項定理から導出された解法に一致する。